体験記「友人の自死」

瑛人くんとの出会いと、私が占い師になった理由:回想編1

 
私の若き友人、瑛人くんが自ら命を絶ってから丸二年……。
それから度々、霊界の彼からミディアムさんを通じて「書くことを続けて欲しい」というメッセージが私に届けられました。

彼が言う「書くこと」というのは、このブログで今まで私が書き綴ってきた、彼の自死に関する記事に他なりません。彼のプライバシーにどこまで踏み込んでいいのか悩みましたが、彼の言葉に気を取り直し、回想編として以前のシリーズに追記することにしました。
そんな訳で、ここからは『私小説風のノンフィクション』という形で続きを書き足していきます。
 

【前シリーズの最初の記事はこちら】
止められなかった自殺予告…自死を選んでしまった友人①

毎週、決まって同じ曜日に私の占いブースに通ってきた彼

 
占い師として日々待機していた私の元に、瑛人くんは毎週、決まって同じ曜日に通ってくるようになりました。とは言え実際に占いをしていたのは最初の2~3回のみで、その後はなぜか占星術の個人レッスンのような内容に変わっていきました。

瑛人くんは当時、時代の転換点であるパラダイムシフトに関心を寄せ、書籍やインターネット上に書かれた情報をあれこれ探っては読み漁っていました。
私には社会学者や経済学者のような専門知識はありませんが、占星術的な解釈としてならどうにかそれに答えることは出来ました。と言ってもどんな角度から飛んでくるか分からない質問に、内心では戦々恐々としていたのですが……。
 


 

頭の回転が良く、とにかく常に考えている瑛人くんの口からは、一般的な占いの現場ではほとんどお目にかからないような小難しい質問がポンポン飛び出しました。
「冥王星が水瓶座に移動して水瓶座の時代になると、今までのようなヒエラルキーは崩壊すると思いますか?これからは庶民の時代になるって言われてるんですが、それは時代の流れ的に正しいですか?」
「大惑星が何座に入ると戦争が起こるとかってありますか?夕貴さんはこれから戦争は起こると思いますか?」

答えに窮しながらも私なりの解釈をどうにかこうにか毎回伝えはしていましたが、彼はそれでも満足したようでした。
たぶん、彼は元々ただ考察したり論じたりしたかっただけなのだと思います。でもそれに付き合ってくれるような人は周りにはいなかった……そこで占星術を扱う占い師なら自分の考えに見合う回答をくれるのではと思い、私の前に数名の占い師を訪ねたようでしたが、空振りだったそうです。
 

マンツーマンのオンライン講座を開始した理由

 
私は私で、毎回スマホのメモ帳にびっしりと聞きたいことをメモしてやってくる瑛人くんに、お金の工面はどうしているのかと若干心配にもなっていました。
占いに来ているというより話しに来ているという感じだったし、気になることがありすぎるのか、毎回時間を延長していくため一回の料金が万単位になることもしばしばでした。

もちろん、こちらにしてみれば頻繁に通ってきてくれる上得意ではありましたが、病気で会社も辞めてしまって現在はほぼ引きこもりだという彼に、これ以上代金を払わせるのは忍びない気もしました。
なので、もし占星術に関心があるのなら、定額制の占い講座の個人レッスンという形にしてはどうかと切り出してみたのです。
巷ではリモートワークなども定着しつつあり、それに倣ってわざわざ通わなくてもオンラインで受講出来るようにと提案したところ、インターネットが大好きな瑛人くんは大喜びでそれに飛びついたのでした。
 


 

今にして思えば、あの頃の瑛人くんは誰かと繋がりたかったのかもしれません。病気のせいで社会生活を断念せざるを得なかったことを、ずっと嘆いていました。
周囲の偏見と無理解の中で引きこもりを余儀なくされたものの、彼本人は決して内向的でも無気力でもありませんでした。
そしてここから始まった私たちの関わりは、二人にとって後々大きな意味を持つことになるのです。
 

私はなぜ、なりたくもなかった占い師になったのか

 
占い師という胡散臭いものの代表格のような仕事を、なぜ私はしているのか……。
私は元々、お花畑のようなキラキラ系スピリチュアルや、何でもかんでも悪霊の仕業に仕立て上げたがる自称霊能者といった輩が大嫌いでした。
占い自体は子供の頃から親しんではいましたが、そうしたおかしな人々と並べられるのは真っ平御免で、だから世間的に色眼鏡で見られることの多い占い師になろうなどとは全然思わなかったのです。

それが一転してなぜ自分の占いサロンさえ持つに至ったのかというと、母を55歳という若さで亡くした体験によるところが大きいかもしれません。
再婚相手から精神的DVを受けていた母は、精神衰弱の末に自殺未遂を起こしたことがありました。幸い一命は取り留めたものの、それから数年越しにようやく離婚が成立した、そのたった4日後に突然心臓発作で倒れて急逝してしまったのです。
 

この時の何とも言えないやるせなさが、後に「苦しむ人々の心の拠り所になりたい」という私の中の思いを強くしたことは否めません。とはいえ自分に出来るのはせいぜい占いくらいで、せめてこれが何かの役に立つのならと、『場の提供』という意味で起業を思い切っただけのことです。
また、この時数々の不思議な出来事を目の当たりにし、見えない世界への探求心に火が付いたことも関係していると思います。
 

母が亡くなった時に私が体験した不思議なこと

 
母が亡くなる二日前、母は私の祖母に電話をかけて「もう私は長くないから、先に行って待ってるね」と伝えていたと言います。
訃報を受けた祖母が、「峰子(母の名前・仮名)は自殺なの?」と私に聞いてきたのも無理はありませんでした。誰も、母本人が自らの死期を予告しているなどとは思いもしませんでしたから。

その日、夕方近所をウォーキングして帰って来た母は、夕食に煮物を作って布団を敷き、ご丁寧に電気あんかのスイッチを入れて布団を温めてさえいたのです。
その状態で「もう私は長くないから」などと言われても、誰も信じるはずはありません。
それでも実際、母は予告通り突然倒れてこの世を去ってしまいました。
 

ただ、母は元々人の誕生や死期が分かる人で、私や妹が妊娠した時も本人より先に察知して連絡をしてきました。幽体離脱や臨死体験らしき出来事も体験していたようです。
そんな人だったから、自分の死期さえ悟ってしまったとしてもあり得なくはないのかもしれません。
 


 

また、母が亡くなる数か月前には、家中の刃物という刃物の留め具が外れて分解してしまう謎現象が起きました。
花瓶はひび割れ、水を入れることすら出来なくなってしまいました。急須の注ぎ口も突然ポロッと取れて落ちてしまい、私の化粧箱に内蔵されていた鏡は、触れてもいないのに翌朝開けたらパックリと割れていました。

極めつけは、母が手にしていた念珠が切れてしまったことです。信心深い母が仏壇に向かっていると、念珠がいきなり解けて、数珠玉がバラバラバラッと畳に転がりました。
さすがにこの時は、母も私もサーッと血の気が引いてしまいました。私自身は特に迷信深い方ではありませんが、罰が当たっては怖いと転がった数珠玉を拾い集め、半紙に包んで仏壇の引き出しにそっとしまっておきました。
この数珠玉は、後に母の棺の中に納められることになります。
 

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帰幽時の不思議な現象は母だけではなかった

 
父が亡くなった時も、説明のしづらい出来事が起きました。
父が倒れる二日前、リビングの床にタロットカードが落ちていました。家族が行き来するリビングの、それもかなり目立つ位置の床に、ふと目をやるとカードが一枚落ちていたのです。

私は通常、リビングで占いはしません。だからここでうっかり落として拾い忘れたなどとは考えにくいことでした。ましてや、家族がせわしく行き来していたのに、それまで誰一人落ちていたのに気が付かないなんてことがあるでしょうか。そのカードは、「突然そこに現れた」と言う方がむしろ自然でした。
 

タロット大アルカナ「愚者」画像
 

落ちていたのは、「愚者」のカードでした。
0(ゼロ)という、番号ともつかない数が割り振られたこのカードには、解き放たれた純粋な魂、魂そのもの、魂の旅などという象徴が込められています。
カードに描かれた愚者の足元には白い犬がいて、まるで彼のパートナーとして寄り添ってくれているようにも見えます。

それから程なくして父は倒れ、意識不明のまま救急車で病院に運ばれました。そして危篤状態の末、翌日の明け方に息を引き取ったのです。
 

父のお通夜の日、父が飼っていた白い犬のハチは、何かを察知したのか一晩中窓の外で鳴き続けていたそうです。葬儀を終えて戻ってみると、ハチはそのまま、庭でうずくまった姿で息絶えていました。
 


 

もしかしたら、あの愚者のカードは父の旅立ちを暗示していたのではないでしょうか?
可愛がっていた白い犬と一緒に天国に昇って行った、父の魂。それを事前に知らせるための合図として、あのカードは突然リビングの床に現れたのではないかという気がします。

片足先を落石事故によって切断し、生涯ギプスをはめたまま歩行が困難だった父。死によって不自由な肉体から解放されることは、『魂の解放と旅立ち』という愚者のカードの象徴通り、待ち望んでいた無上の喜びだったに違いありません。
 

両親の帰幽時の一連の出来事をきっかけに、見えない世界からのサポートというものは本当にあるのではないかと、私は本気で考えるようになりました。
そこから占いだけでなく、死後の世界や魂の仕組みなど、スピリチュアリズムと呼ばれる分野にも興味を持つようになっていったのです。
 

▼「友人の自死」回想編:続きはこちら

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夕貴
自ら予言した通りに亡くなった母、突然倒れて帰らぬ人となった父。そして魂の家族とも言える大切な人を自死により亡くしました。それでもまだ彼らの魂は存在していることを、常に感じて記録しておきたい…そんな悪戦苦闘の日々を綴っています。

POSTED COMMENT

  1. 夕貴 より:

    TAKEさま コメントありがとうございます。
    本当に、瑛人くんの生前にそういう人が現れてくれていたらと思わずにはいられません。
    ネイタル12ハウス太陽とは!私も同じく12ハウス月太陽です。
    きっとそういう筋書きを予め決めて生まれてきたのでしょうね。意味のあることだと思います。

    地上に近い位置には低級霊やそれに準ずるスピリットがたくさんいるみたいですね。
    ほとんどは自分の存在を示したいだけの寂しいスピリットだと何かで読んだことがありますが、
    中には邪心や悪意を持って人の悪想念を利用する存在もあるため、興味本位でオカルトに触れるのは危険だと思いますし、
    自分自身も油断すると騙されてしまいかねないので、常にしっかり地に足を着けていかなければと感じています。

    「人の目はごまかせても、神様の目はごまかせない」――以前、私が師匠から聞いた言葉です。
    どんなに見せかけの自分を演出していても、いざ肉体を脱いだら全てが丸見えになってしまうんですよね。
    生前の思考や振る舞いがそのまま死後の在り方を決めるのであれば、地上にいる間に少しでも魂を磨いておきたいと願ってはいるのですが…(笑)

  2. TAKE より:

    瑛人さんの性格も境遇も自分にそっくりです。
    もし現実で会えていたら占星術の考察話で意気投合していただろうなと思います…!
     
    自分の場合は、太陽の年齢域(ネイタル12ハウス太陽)になってから人間関係でも職場でも追い込まれ、引きこもり生活になりました。これまでの一連の出来事はスピリチュアル方面に路線変更せざるを得ない状況にする為だったんだろうなと今は確信してますけども。
    最初からそういうストーリーだと決まっていたんでしょうね。やり方が強引すぎますけど…。
     
    スピリチュアルに限らず、どの業界も共通して声が大きい人間ほど偽物で嘘つきですよね。
    スピリチュアル系は最初は疑うくらいが一番良いと思います。そもそも実体験が無いと本物と偽物の見分けがつきませんし。
     
    それに、中途半端に霊感がある人は悪い存在とコンタクトして利用されている事に気づいてないから厄介なんですよね。引き寄せ体質の自分にとっては危険でしかないです。実際、相談後に数日間酷い霊障に襲われた事もありますし。(霊障のお陰で相手が本物だと思い込んでいる偽物だと確信しましたけどね)
     
    いろいろ試しましたが自分には独学とパワーストーンが一番合ってるみたいです。
     
    ブログを拝見していて、夕貴さんはかなり疑い深い方だというのが分かるので、その点で信用できるなと感じています。
    コンタクトしている霊存在がどちら側なのか疑わずに信じてしまう人は危険すぎて近づけないので。霊に限らず生きてる人間も同じですけど…。

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