身の上語りの中で、瑛人くんは平凡な幸せへの憧れを口にしたことがありました。
「僕はただ、普通に仕事をして、普通に結婚して家族を作って、ってことをやりたいだけなんです。別に大金持ちにならなくたって、有名人にならなくたっていい。そんなに特別なことじゃなくて、普通のことがしたいだけなんです」
それすらも叶わない自分は呪われているのかもしれない。そんなことを言いながらも、では本当に結婚をしたいのかというと、「何かいまいちピンと来ないですね。10年くらい後ならともかく、今自分が家庭を持つなんて考えられません」と、まるで他人事のように無関心な素振りを見せるのでした。
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➡ 二人の出会いは江戸時代の前世が関係している?私がそう思った理由:回想編3
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➡ 瑛人くんとの出会いと、私が占い師になった理由:回想編1
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➡ 止められなかった自殺予告…自死を選んでしまった友人①
パワハラ上司に見下されて増大したコンプレックス
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▶パワハラ、いじめ…前世やカルマの一言では片付けられない「深い理由」
女性に近付こうとするとことごとく邪魔が入ったという彼
結婚のためには恋愛をしなきゃいけない、と思った彼は、顔見知りになった女の子に連絡先を聞こうとしたことが何度かあるそうです。ところが毎回決まって邪魔が入り、結局諦めてしまうという繰り返しでした。
その邪魔というのが、例えば今まさに連絡先を聞こうとした瞬間に「あっ、いたいた」と呼び出しを受けるといった類のもので、本人曰く「俺もう呪われてるんじゃないの?」というくらいに、いつも絶妙なタイミングでことごとく人に邪魔されたそうです。
それにめげずにあともう一押しすればいいのに……と、聞いていた私は思いましたが、そもそも形から入ろうとしていた(恋愛感情は持っていなかった)彼にとってはそれ以上押す気にもなれず、『邪魔が入る=付き合うことを止められている』と感じてしまい、結局誰とも交際には至らなかったのでした。
瑛人くんの名誉のために書いておきますが、彼は決してモテないという訳ではなかったようです。まったく予想外の女の子から連絡先を聞かれたり、大学受験が差し迫ったタイミングで告白されるなど、彼の意に染まない形ではあれ、女性との接点はごく普通にあったようです。
ただどうしてもシステマティックというか、バリバリの理系で左脳派な彼は、感情というより形式的に(お見合いのように)恋愛を捉えていたため、少しのタイミングのズレも許容できなかったのだと思います。
そういう意味では女性に対してものすごく潔癖でしたし、誰に対しても今まで一度も恋愛感情を持ったことがなかったと言います。瑛人くんのそんな話を聞いて、私にはどうしても江戸時代の前世のカルマがそこに横たわっている気がしてならないのでした。
もしも彼が、江戸時代の前世で放蕩三昧の遊び人だったとしたら…
私自身が前世で花魁だったらしいことは複数の人々から言われていましたが、瑛人くんの前世についてはただ単に私個人の感覚でしかありません。それでも、私にはどうしても彼が『前世の私の二度の堕胎の相手であり、私を贔屓にしていたお客』のように思えて仕方がありませんでした。
彼が占いブースに定期的に通ってくる姿は、まるで遊女の見世を訪れるお客の姿のように思えましたし、他の女性占い師のところに行った時は、『例の心霊現象(統合失調症の妄想のような?激しいポルターガイスト)が起きて足止めされた』と彼が言うように邪魔が入ったのに、私のところには何回通っても何の支障も起こらなかったのです。
瑛人くんは「夕貴さんのところに誘導された」と何度も言っていましたが、後に彼が亡くなってからも、ミディアムさんの口を通じて「まるで吸い寄せられるように夕貴さんの前に座っていた。気が付いたら目の前にいた」と伝えてきました。
いつかは結婚したいと言いながら、女性に対してはどうしても好きになれない、交際にも積極的になれないというのは、前世で放蕩三昧を繰り返したことへの戒めとして、「今世では女性に縁のない人生を送る」という設定になっていたのでは?とも思います。
また、女性と付き合ったことがないのを上司にいじられマウントを取られていたこと、男性でありながら会社の人々からひどいセクハラを受けたことなど、セクシャルな事柄には常に苦悩が付きまとっていた彼の人生は、やはりそこに何かしらの宿業めいたものを感じてしまうのです。
次回の記事で詳しく書こうと思いますが、彼が前世から持ち越した(と思われる)そうしたカルマは、私に出会うための仕掛けでもあり、また彼が自死を考え始めたきっかけの一つでもあったように感じます。
実際、この会社でのパワハラが引き金となり、瑛人くんはその後何度も自殺未遂を繰り返したのでした。
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