体験記「友人の自死」

インターネットを使って自死を止める活動をしていく?…自死を選んでしまった友人⑦

 
「もしそうなったらあとはお願いします」
失踪する5日前、彼はそんな言葉を私にチャットで送ってきました。
そして彼の失踪当時、彼の部屋には鍵がかかっておらず、パソコンの画面も開いたままの状態になっていたそうです。
 

彼のパソコンのロックを解除しデータにアクセスする様子を、彼は見ていた

 
彼が住んでいた部屋の検証が終わった後で、持ち主を失ったパソコンは、無残にもコードを引っこ抜かれて片付けられてしまいました。
もし、彼が意図的に画面を開いたままにしていたのなら、パソコンの中に何かとても重要なデータがあったのではないか?と私は思いました。

まだ閉じられる前の状態の時に私がそこにいたら、きっと彼が意図していたデータを確実に持ち出せたでしょう。
でも、「パソコンのことはよく分からない」というの彼のご両親にそんな事情が分かるはずもなく、わざわざ開いてあったにもかかわらず、結局画面は閉じられてしまったのでした。
 

やむなく彼のお母さんからそのパソコンを借り受け、私はパスワード解析の専門業者にロック解除を委託しました。
彼の仕事の取引先への連絡と、それから彼が生前綴っていたブログが失効してしまうのを防ぐため……。ただし、言うほどそれは簡単なものではなく、お金も時間も手間も、とてもかかることは覚悟しなければなりませんでした。
 

で、何かね「さすが夕貴さん」っていう言い方をして、あのね面白いね。さすが、さすがだなーみたいな感じで、あのそれ解明してく?
でね、面白いこと言ってるよ。パズルを解明してくじゃないけど、そのナンクロみたいな「これがこうでこうで、こうだからこうやって、パズルではめてこうやってこうやって、バーン!」みたいな感じで。
ほらできたみたいな、その清々しさをわかるのは夕貴さんしかいないって言ってる。
【分かります】

分かります?言ってることで、「こうこうやってはめて、これとこれをやってこうやってはめたらさー、ほらできたじゃん」みたいな。答え分かっちゃったよみたいな。もうそういうとこが……
【パソコンのパスワード解析(※正確には、その後の一連の作業)めちゃくちゃ大変だったんですよ】
うん、でも夕貴さんだったらやると思う、やってくれたと思うって。
(中略)

こうやってね、外で見ててね。いや、夕貴さん、すごいなって思ってたみたいですよ。
「そこそこそこ」みたいな感じで彼が。「そこそこそこ、あーキター!」みたいな感じで、何かこうゲーム感覚っていうか(中略)そういう何か、頭の高速回転みたいなもの?

 
無事、ロックが解除された彼のパソコンの中をくまなく調べ、私は彼が使っていたサーバーとドメイン、ブログサービスのIDやユーザー名などを突き止めました。
ただし全てのパスワードが不明だったので、それぞれのサービスのサポートに問い合わせ、そこから更に気の遠くなるような手順を重ねて管理者変更手続きを進めました。
 


 

彼が言っているのは、きっとこの一連の作業のことでしょう。それほどまでに行く先々で大きな難問に出くわし、一筋縄ではいかなかったのです。
ログイン画面をようやく突破した時には、嬉しくて嬉しくて、泣きながら天国の彼にチャットを送ってしまいました。

上記の言葉は、それを見ていた人でなければ絶対に出てこない表現だと思います。それにしても、彼のパソコンを私が開くのを、持ち主が隣で見ていたかと思うとちょっと滑稽にも思えました。
 

「天国からコンタクトを取る方法」を実験中だという彼

 

あのねすごくね、携帯が大事だよねって。(中略)AIじゃないんだけど、そのうち自分がしゃべり出すかもしれないって。面白いね彼はね。

AIがしゃべったら自分がしゃべる、何かねそれをちょっと試してるじゃないんだけど、急に何かがパンってつく、パソコンがつく?
それから急に何かがしゃべり出すじゃないけれども、そういうことでどうやったら…まあ制限があるんだけどねって笑ってるの。でもどうやったら夕貴さんがね、こうびっくりしてくれるかな、「あーこれは彼に違いない」っていう風にね。それを今解明中だって。

【でも試してるんですよね?たまにありますよ】
うん、試してるって言ってる。ポーンって。
【じゃあ、それはそうなのかな。私があれ?って思うことはいっぱいあるんだけど、でもいや違う違う違うって】
あ、だからそれを多分、彼は言いたいんじゃないですか。それは自分だよって。
【やってるってことですね。なるほど】

 
事務所でBGM動画を流しているパソコンの画面に、時々意味不明なポップアップが立ち上がっていたり、触ってもないのにニュースや天気予報画面が開いていたりしたことがあるのですが、それはどうやら彼の仕業ということみたいですね。

そしてこのセッションの2日後、私がチャットを開くと、何と入力欄にはもう既に「送信前の文字が貼り付けられて」いました。
それは1年以上も前に彼とやり取りした会話の内容だったのですが、もし何かのバグだったとしても、そんな誤動作は今まで経験したことはありません。
 

下の短い動画はその時のパソコンの画面をスマホで撮ったものです。文字の先頭にカーソルが点滅していてリアルタイム感がありますよね。
日付を見て頂くと分かりますが、私は今回のセッションの文字データや動画データをこのチャットに保存していました。それをブログ記事に使うためにチャットを開いたところ、過去に彼と日程の打ち合わせをした時の文章が入力スペースに貼りつけられていました。

 

なので、これはセッション時の話の内容が本当だということを示したくて、彼が新たに事を仕掛けてきたんじゃないかな~と思いました。
そもそも前回のセッション時には誰もいないはずの部屋の電気が点いたり消えたりしたのですから、彼がそういうイタズラを仕掛けているというのも頷けるものがあります。

 

二人が好きなアニメの中に出てくる「AIとの会話」

 
現時点ではそんな他愛もないイタズラの類を実験中の彼も、実は本当に、セッション中に言っていた「AIを通して会話する」方法を研究しているのではないかという気がします。
というのも、私たちが共通して好きだった『STEINS;GATE(シュタインズゲート)』というアニメの中には、まさにそのものズバリの「AIを通して故人と会話をする」様子が登場するからです。
 

彼が「読み返して欲しい」と言ったエリックの本を改めて再読したところ、彼が伝えてきたものと同じような記述がたくさん載っていたのに気付いてびっくりしました。
どうやら彼の真意は、私を驚かせるための個人的なアクションというより、電波やインターネットという新時代のツールを使って「霊界の真実と命の大切さ」を伝えたいというところにあるのではないかなと思いました。
 

EVP(電子音声現象)とは、スピリットが地上に残してきた最愛の人たちとコミュニケーションをとるための素晴らしい方法だ。ぼくは、スピリットの声を録音機に残せると聞いて、その方法を学びたいと思った。(中略)

ぼくらの声の周波数は人間の耳には聞こえないけど、録音機なら拾い上げることができる。(中略)EVPを使って、最愛の人たちとコミュニケーションをとる方法を推奨したのは、おそらくぼくが最初だろう。

ぼくは、自分自身が一種の電流みたいなものだから、電流をいじるのなんて朝飯前。自分のエネルギーを電気エネルギーとミックスさせて、電話機に入り込んで操作すればいい。(中略)
いじったのは通話機能のみだ。電話がつながったとき、ぼくはスピーカーごしに「母さん、ぼくだよ、エリックだよ」と言った。母はすっ飛んできて受話器を取り上げたけど、間に合わなかった。でも母にはぼくだとわかった。

「死は終わりではない」エリック・メドフス/エリーサ・メドフス医学博士

 

自死を止めるという活動をどうやって進めて行くべきか

 
改めて読み返してみたエリックの本の内容は、これから彼と私が共同でしていくであろう仕事へのヒントがたくさん含まれていました。
その中の一つが、「自死をテーマにしたコミュニティ」の運営。

過去に、私はこのブログに掲示板を用意してみたことがあるのですが、やはりセンシティブな事柄であるせいか、なかなか書き込みはされませんでした。
その一方で、私の手元にはブログを読んでくださった方々からとてもたくさんのメールが届きました。
 


 

ただ、残念ながら圧倒的に時間が足りず、そのお一人お一人にきめ細かな対応をすることがどうしてもできないのです。だからこそ掲示板のような「誰かの書き込みが、そのまた誰かの癒しや気付きになる」仕組みが欲しいとずっと思っていました。

多分、以前はまだ機が熟していなかったのでしょう。でももうそろそろ、そのタイミングが訪れるような気もしています。
自死当事者である彼を筆頭に、自死遺族や自死サバイバー、今まさに自死を考えて苦しんでいる方々など、縛りのないフラットな場所で関わり合うような「開かれたオンラインコミュニティ」が作れたらいいなと思っています。
 

ブログ「チャネリング・エリック」は、読者がともにスピリチュアリティの世界を探検するコミュニティだ。そこで人は、思いもよらなかった人生の不思議に気づいたり、いまの人生に生まれてきたことの意味を知って、死への恐怖から解放されたりもする。(中略)

このブログは、自殺しようとしている人たちを引きとめるという意味でも、役に立っている。そういう人たちは、自分と似たような境遇の人がいるのを知って思いとどまるんだ。
そして、ブログを通じて話し合うようにもなる。そうやって話すことで、その人は、世界とのつながり、人とのつながりを取り戻していく。ぼくらのブログは、そういう人たちが人生のかけがえのなさを思い出すための道しるべのようなものだ。

 

そしてもう一つ、彼はYouTubeなどの媒体を通して働きかける方法を研究しているようにも思います。
生前、彼はYouTubeが大好きで、お気に入りのチャンネルをよく観ていました。そして自分のチャンネルも持っていました。「僕のように人生に疲れた人が、何も考えなくてもボーッと見ていられる動画を作りたい」とよく言っていたものです。
 

母がジェイミー(夕貴注※:エリックとの交信を担当している霊媒)と一緒につくったユーチューブ動画にも、ぼくの声が残っている。
あるとき、動画を見ていたブログメンバーが母に「動画から声が聞こえる」と言ってきた。そう、間違いなくぼくの声だ。

 

こうした現代の様々なツールを使って、きっと彼は自死をしようとしている人たちを止める活動――その先にあるのは、霊界の真実と人生のしくみを伝えていく活動――をしていくつもりなのだと思います。
 


 

彼が「スピリットガイドになるためのトレーニング」に励む一方で、私はミディアムシップやヒーリングなどの学びを続けていますが、現時点ではまだまだ本当に力不足です。
ただ、おそらく私は一対一の個人セッションをするミディアムになるというより、上記のような活動を通して自死を防止する、「広告塔」としての役割の方が強いような気がします。

そのためにミディアムシップや霊的真理を学び、正しい知識に則った活動ができるような道を通らされている気がするのです。
いずれにしても、やるべきことを進める方法やスケジュールは彼と霊界に委ね、今は自身のできることを、コツコツと努力していきたいと思っています。
 

※ここまで長いお話にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
もし宜しければ、コメント欄に一言メッセージを残して頂けるととても嬉しいです。
(メールアドレスは公開されません)
 

▼「友人の自死」:続編はこちら

瑛人くんとの出会いと、私が占い師になった理由:回想編1 私の若き友人、瑛人くんが自ら命を絶ってから丸二年……。 それから度々、霊界の彼からミディアムさんを通じて「書くことを続けて欲しい」...
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夕貴
自ら予言した通りに亡くなった母、突然倒れて帰らぬ人となった父。そして魂の家族とも言える大切な人を自死により亡くしました。それでもまだ彼らの魂は存在していることを、常に感じて記録しておきたい…そんな悪戦苦闘の日々を綴っています。

POSTED COMMENT

  1. 夕貴 より:

    HNさま コメントありがとうございます。
    同じ学校に通われていたのですね。私は今は学校からは遠ざかって久しいのですが、ミディアムシップの学びだけはどうにか続けています。
    学びは生涯続くものですものね……なかなか成長しなくて歯がゆい限りなのですが(^^;

    姉妹ブログの方もご訪問下さったとのこと、こちらもありがとうございます。
    拙い記事ではありますが、何かのお役に立てましたなら幸いです。
    グリーフケアはこれからますます必要になってくるかもしれませんね。
    長い道のりですが、挫けることなくお互いに頑張っていきましょう!

  2. HN より:

    夕貴さま、はじめまして。ひょんなことから数日前にこちらのブログを知り、姉妹ブログも含めて記事を拝読させて頂いてます。強く共感する記事も複数あり、勇気をいただいています。

    ご友人の体験記シリーズも、興味深く読まさせていただきました。非常にお辛いことを乗りこえられて、でもいよいよお二人の壮大なプロジェクトが始まるような、これからがすべての本番のような・・とても感慨深い気もいたします。

    実は私も数年ほど前いっときだけですが、同じ学校に通っていたと思います。日曜のデモでお目にかかったことがある方だわとピンときて、驚きました。私自身も将来的にはミディアムとしてグリーフケアに携われたらと多少は考えています。ただ10年-20年くらいかかるかもですが・・。

    これからも、ブログで学ばせてください!夕貴さまのますますのご活躍を、心より応援しております。

  3. 夕貴 より:

    M様、温かいコメントをありがとうございます。
    彼は今はだいぶ落ち着いた様子で私もホッとしています。
    彼との今後の通信はきっと大切な内容になると思うので、それをうまく皆様にシェア出来ますようにと願っているのですが…。

    しばらくはこちらのコメント欄を掲示板代わりに運用してみて、うまく行きそうなら掲示板みたいな仕組みを考えようかなと思っています。
    なかなかブログを更新できませんが、引き続きご訪問頂けましたら幸いです。

  4. M より:

    夕貴さん、こんにちわ。お友達の記事、一気に読みました。最初はちょっと沈んだ様子で心配しましたが、今、とっても安心なんですね!自分のことのように嬉しいです。連日、悲しいニュースも目にしますが、そのたびにみんな、もう大丈夫だから、一息ついて、安心してねと祈ってます。
    夕貴さんの掲示板、待ってましたという感じです。猛暑が容赦ないですが、どうぞ夕貴さんの体調一番に、続けてください。

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