Youtubeに自作アニメを投稿し始めた瑛人くんは、みるみるうちに明るく陽気になっていきました。今までは自分のことを『僕』と言っていたのが時々『俺』に変わり、美容院に行って髪を染めてみたり、ずっとやってみたかったという作曲ソフトを買って見様見真似で曲を作ってみたり、初めて会った頃とはガラリと印象が変わってきました。
【前回の記事はこちら】
➡ 低級霊との接触は日常普通にあり、快楽への耽溺は邪霊を招く危険がある:回想編9
【回想編の最初の記事はこちら】
➡ 瑛人くんとの出会いと、私が占い師になった理由:回想編1
【シリーズの最初の記事はこちら】
➡ 止められなかった自殺予告…自死を選んでしまった友人①
Contents
アニメ作りは彼にとっては甲乙両面の諸刃の剣だった
瑛人くんが明るくなってきたことについて私は、やりたかったことに色々トライして彼なりに自信がついてきたのかな?と思っていたのですが、彼自身が言うには「ずっとアニメを作っていると脳内麻薬のようなものが出てしまう」とのことで、後から振り返ってみれば、このアニメ作りは彼にとっては諸刃の剣だったのかなという気もしました。
確かに、心の奥底に潜んでいたトラウマを開放するような効果もあるにはあったのですが、このアニメ作りがきっかけで、その時までは鳴りを潜めていた双極性障害の傾向が表出してきたようにも思うのです。アニメを作ることが彼の心の回復に役立つ一方で、脳内物質の分泌バランスを狂わせる要因にもなっていたのだとしたら、何とも皮肉な気がします。
思えばこの頃から彼の表情はくるくる変わるようになり、彼がサロンに顔を見せるたびに「前回来た時とはまるで別人のようだな」と感じることが多くなりました。
ハイから鬱への転換…涙が止まらないと言ってきた瑛人くん
彼がこの頃投稿した作品に「部活の勧誘の話」というものがあります。これは身体能力がズバ抜けたスーパー高校生が様々な運動部から勧誘を受けるというストーリーで、作品の中に「街中の監視カメラをハッキングして君の行動を監視していた」というセリフが出てきます。
いつも誰かに監視されている気がするという、張り詰めた心の状態に苦しむ彼の心情を強く反映した作品のように思います。
脳内麻薬がどうのと言い始めてから妙にハイテンションになっていた瑛人くんでしたが、その勢いでこの作品を描いた後、しばらくして躁鬱の波の反転がやってきました。
チャットの書き込みでも何やらメンタルを崩しているように感じたので、しばらくぶりにZOOMで話すことを提案してみたところ、「お願いします。今日なんか涙止まらないです」という返事が返ってきました。
彼のトラウマの原点とも言える「心の傷」に触れる作品だった
「部活の勧誘の話」を書いてから、彼の心はジェットコースターのように乱高下を繰り返しました。これは後に彼が亡くなってから知ったことですが、実は「部活の勧誘の話」は彼のトラウマの一番深い部分、原点とも言える大きな心の傷に触れる内容であったのです。
その話はこの後に改めて書くことにして、とりあえずこの時は急遽ZOOMで話す約束を取り付け、急激に落ちた彼のメンタル回復に努めようと思いました。
今、友達と言えるのはネットのゲーム友達数人だけだと言う彼は、学生の頃に仲の良かったネット友達のTwitterアカウントを久しぶりに見つけ、フォローしてみたけどフォロバ(フォロー返し)はしてもらえなかったと寂しそうにつぶやきました。
「でも、『死なないで』っていうエアリプ(間接的に個人に宛てたメッセージを投稿すること)はあったんですよ」
聞けば、元々はLINEでも繋がっていたというその人に、瑛人くんは死にたい、死ぬかもしれないということを言ってしまっていたらしく、だからフォロバされなくても仕方ないと納得はしていたようでした。
彼が言うには幽霊に襲われていた(周囲からは妄想のように見える症状が出ていた)時に、パニックになって「うわーーーーー!!!」「助けて!!!!」みたいなLINEを何度も送ってしまったそうで、それが原因で結局その当時の友達はみんな、彼の元から去って行ってしまったそうです。
「そんな変なこという人とは付き合えない、みたいなこと言われて誰からも相手にされなくなって……」
そう言って泣きながら(この日は画面をオフにして音声のみで通話していました)瑛人くんは、だんだん自殺のことを口にするようになりました。
「俺いつか死ぬかもしれないです。そのうち自殺するんだろうなって思いながらずっと来たんで、俺はそういう感じなんですずっと」
アニメ制作で躁状態になった後の反動がやっぱり来たな、と……それをどうやったら助けられるのか私には分からず、ただ一緒に泣くしかなくて、私と瑛人くんのガイドに助けを求めて祈ることしかできませんでした。
ネットの書き込みを特定され、損害賠償請求を受けた出来事
これは瑛人くんが亡くなった後に彼のお母さんから聞いた話ですが、瑛人くんは高校生の時にネットの書き込みを特定され、その相手から慰謝料・損害賠償請求を受けたことがあるそうです。と言ってもお母さんの記憶も少々あやふやな印象だったため、話がどの程度まで本当なのかはよく分からないのですが……。
当時、瑛人くんの身近な親族の方が「近所の人から攻撃を受けている」と再三訴えていたそうで、それを真に受けた彼がネットの地元掲示板のようなところに警告をほのめかすような文章を書き込んでしまった、といった趣旨の話でした。
彼にしてみれば青少年なりの純粋な正義感で書き込んだだけのはずだったものが、誹謗中傷と取られて発信者を特定され、損害賠償請求を受けてしまった訳ですから、それはまるで青天の霹靂とも言える衝撃だったに違いありません。
運の悪いことに、その相手は一度ならず二度までも示談金(?)を要求してきたそうで、実際にそれを支払ったのかどうかは私には分かりませんが、まだ年若い瑛人くんの柔らかな心は、こうして「この世は信用のならない監視社会だ」という刷り込みを受けてしまったのではないかなと思うのです。
まだパソコンの普及率も低く、ネットリテラシーなどという言葉もなかった当時のこと、それなのに一高校生の書き込みが特定されて損害賠償請求を受けるなんて、その当時のネット事情からしてみればあまりに出来すぎているような気もします。なので彼が生前よく言っていたようにもしも本当に誰かに監視されていたとすれば、書き込みの特定も当然のごとく簡単だし、また邪霊の干渉もあったとすれば理不尽な金額の請求も腑に落ちるのですが……ここは体験談を綴っているブログだという性質上、その辺りについてはこれ以上深く追求しないでおこうと思います。
瑛人くんにとって、「誰かに常に監視されている」という感覚はいつもインターネット上で感じるものだったようですが、それはこの事件をきっかけとして発症したものだったのではないかと思うのです。また、親戚の方も彼と似たような状態を見せていたとすれば、家系の遺伝的要素もあったと言えるかもしれません。(彼の訴えに沿うなら「親戚の人も含めて監視されていた」という見方も出来ますが)
「掲示板などに書き込んだりしなければそんなことにはならなかったのに」というのはあくまでそもそも論であって、まだインターネットがそれほど普及していなかった頃に若気の至りでしてしまったことであれば、悔やみこそすれそこまでは責められません。何よりも、それで人生を破壊されてしまった彼自身が一番に責めを負っていたことなのでしょうから……。
善意を曲解され、悪意として受け取られるショック
お母さんからこの話を聞いた時、私には瑛人くんの心の叫びが痛いほど伝わってきて、しばらく動くことができませんでした。あれほど純粋な彼が、人を陥れるためにそんなことをしようと平気で思うでしょうか?
私には、彼が本心から「親戚の人をかばおうとしてしたこと」だという風に思えてなりませんでした。ただ若くて考えが至らなかったというだけで、彼にとってはむしろ人助けくらいの感覚を持っていたのではないかと思います。善意を捻じ曲げて誤解され、まったく正反対の悪意として受け取られてしまった――その時の彼の打撃を思うほどに、私の心もしくしくと痛みました。
後日談ですが、ミディアムさんを通して「夕貴さんが(自分が亡くなった)今も自分の側に立って理解しようとしてくれていることが嬉しい」と、このことについて彼が霊界から伝えてきてくれたことがありました。
似た者同士だった私には彼と同じような心の動きの経験があり、誰にも理解されないであろう彼の悲しみがよく分かるのでした。
まだ私が小学校低学年くらいの頃、通学路の道端に枯れ果てた梅の木がありました。毎日そこを通るたびに、私はその木の先っぽについた小さな花の芽が日に日にふくらんで、今にも咲きそうになる様子を見ていました。
まだまだ寒さ厳しい早春のある日、その木の先っぽに小さな白い花が咲いているのを見つけた私は、体調を崩して寝込んでいた母へのお土産にと、その梅の木の枝を手折って家に持ち帰りました。枯れた木から花が咲くというその生命力に感動し、母にも早く元気を取り戻してもらいたいというただその一心だったのです。
ところがその翌日、小学校の「帰りの会」で、私は手を挙げたクラスメイトから激しく糾弾されてしまいました。(帰りの会には、その日一日をふり返る反省会のようなコーナーがありました)
「昨日、夕貴さんは学校の帰り道に梅の木を折っていました。どうしてそんなことをするんですか!」
―――このとき感じたショックはかなり大きく、私は至福の絶頂から一気に地面に叩き付けられてしまいました。
もちろん弁明はしたと思うのですが、子供なりの正義がまかり通る年頃のこと。「公共のものや自然物を破損させる行為」などが認められるはずもなく、私はすっかりクラス全員から責められる立場になってしまったのでした。
母を喜ばせたかった。春の訪れが嬉しかった。
ただ、それだけのことだったのに……決して悪意で木を傷つけた訳ではなく。
「人ってこんなにも考え方が違うものなんだ……」
おそらくこれが、私がこの地上を生きる苦しみを感じた一番最初の出来事だったと思います。
同じ出来事でも、視点が違えば真意が真逆に取られてしまうことを、その両面から見つめられる人には今までほとんど出会ったことがありません。そういう意味でも、瑛人くんは私にとって、物事の裏側にある本質をきちんと理解し分かち合うことが出来る、唯一無二の存在だったのです。
だから彼がその書き込みによって受けた打撃の痛みを感じ、彼の人生の苦悩を思えば、今でもその事が切なくて残念でならないのです。
▼「友人の自死」回想編:続きはこちら
TAKEさま いえいえ色々とありがとうございます。
表現するってなかなか難しいことではありますが、あらゆる角度から見て様々な配慮をすることは必要だなと思いました。
瑛人くんはYoutubeの投稿に炎上の要素がないかどうか、とても気を遣う人でしたので、私もそれを見習って今後の課題にしようと思います。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします^^
いえ、私の方こそ細かい指摘をしてしまいまして、申し訳ありません。
なるほど、霊界の方からはそのように伝えられているのですね…。たしかに霊界のご本人から遺伝的だと言われていたなら、このような文章になってしまうなと納得致しました…。
こちらこそ、詳細を知らずにコメントしてしまい申し訳ありません。
いえいえ、自分は夕貴さんの記事をありがたく読ませて頂いている側なので、何も知らずに指摘するべきではなかったです。どうか、あまりお気になさらず…!!
TAKEさま、コメント&ご指摘頂きありがとうございます。
そうですね…叔母さんの件に関しては「統失“様”症状」としたつもりだったのですが、確かに決めつけに見えてしまう恐れもあり、少し配慮が足りなかったかもしれません(;_;
病名とも受け取れる部分と合わせて、誰とは分からないようなニュアンスに書き換えてみたいと思います。
実はそれ以外にもプライバシーの観点からここには書けないことが色々ありすぎ、どう表現したものかと悩みながら筆を進めていたため、配慮に漏れが生じてしまった点をお詫びいたします。
(集ストについては、亡くなった後の瑛人くんはそれに関して何も言及してこないため、体験記という性質上これ以上の深追いは出来ないのです……)
瑛人くん本人の病名については、彼自身が統失という言葉を使い、また霊界から遺伝的性質があったことと重度の精神病という言葉を伝えてきたため、その部分を変えることが出来ず、ご不快な思いをされていたとしたら本当に申し訳ありません…。
うーん表現することって本当に難しいですね(;_; もっと精進したいと思います……。
うーん、瑛人さんの叔母さんの事まで統合失調症と決めつけてしまうのはちょっと…と感じました。(この病名が存在しているのが諸悪の根源だとは思いますが)
集ストの実態を知っている自分から見たら典型的な集スト被害者にしか見えません。家族がらみで狙われている時点で可能性が高いです。
狙われていた事を可能性として深追いしないという姿勢は分かりますが、そちらは可能性としているのに、統合失調症の方は推測であるのに可能性ではなく決めつけているように見えてしまいます。
人様のブログでこのような細かいことを指摘していることに気を悪くされないで頂きたいのですが、統合失調症とは実際の被害を妄想ということにしておきたい人達が都合よくでっち上げた作られた病名でしかないので、その病名を肯定することで、そう診断されてしまい周囲に理解されない人達をますます追い詰めていることに加担してしまっているのだというのは分かって頂きたいです。
この問題は、最後の視点が違えば〜の話にも通じる内容になるかと思います。
もちろん、関わらない方が良い話だと思います。関わらないとしても、直接話していない叔母さんの事まで、その病名を何度も強調して話を進める事で、夕貴さんの無意識のうちに理解されない当事者(もし当事者がこちらのブログに訪れた場合ですが…)を追い詰めているような文章になっているというのはご理解いただけたらと思いました。
もちろん、夕貴さんにそんな気はないのは分かってますよ。諸悪の根源は、当事者を周囲から孤立させる状況を作り出す為の病名がでっちあげられた事なので。かなり根深い問題だと思ってます。
見ようによっては私の主観が強すぎる…となるのかもしれませんが…。